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おとぎみち

たまにマジメなおとぎブログ

【書評】教団X

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教団X

教団X

 

 

書評とはいえません。ただの感想をぽろっと書きます。

 

そもそもこの小説、アメトーークの読書芸人で絶賛されたことから純文学としては異例の大ヒットとなり、しかしそれゆえにレビューが荒れたという経緯がありますね。

 

荒れた理由はただ一つ。この作品が純文学だからです。

 

純文学というジャンルは読者を選びますよね。
純文学を楽しむためには、ある種の前提知識が必要となります。というのも、人間の内面を深く掘り下げていくジャンルであるために、その部分を楽しむ準備が必要となるからです。
ミステリー小説のように一般受けする物語がそこに存在するわけではないので、ストーリーの運びに期待をしてはいけないということです。
だからそもそも大ヒットとは無縁なはずのジャンルです。

 

昨今の報道なんかを見ていると、とにかく全世代で活字離れが進んでいるため、こういった当たり前のことに対する意識が薄れており、くだらない批判に繋がっている気がします。
詳しい話はまた今度。

 

とにかく、この小説は売れるべくして売れ、ライトユーザの目に触れたがためにレビューが荒れました。
売れたことと、くだらない批判を受けたことについて、いったい作者はどんな気持ちになっているんでしょうか。
小説の内容よりもそっちの方がはるかに興味あります。

 

では、感想を簡潔にいきましょう。


※以下、すでに読了済みの方のみお読みください。

 

 

 

よく話題にあがる性描写について

これに関しては評価が難しいですね。物語上、まったく必要がないということはないんですが、あそこまでの分量が必要かと言われればやっぱり必要ではないと感じます。
必要であればもっと純粋に掘り下げる必要がありました。
とにかく簡単に快感を感じすぎ、というのが正直なところ。もっと心の襞を侵食していくような多様で妖艶な表現が欲しかったですね。女性の快感とははるかに精神的な部分に寄与しており、同時に駆動されるもののはずです。
「まるで童貞の妄想のような性描写」という批判は、わからなくもないです。
角田光代に迫るほどの心理描写がスパイスとして必要だったはずです。

 

松尾の講釈について

これは僕が萎えたところ。はっきりってこの講釈を読ませるだけの文章力を作者は持っていないと感じました。
話し言葉で延々説明していくというのは、小説において非常に難しい部分です。
でもこの小説ではとても単調で、その内容というのも顔を覆ってしまうような薄っぺらさでした。
参考文献に書かれているものをそのまま引用しているような、ただの説明。松尾という登場人物のフィルターを通っていない、ただの仏教説話以上のものがありませんでした。
松尾の講釈が一部では好評のようですが、あれを面白いと感じるのであれば、もっとちゃんと仏教書を読み解いた方がさらなる発見があるはずです。

 

講釈の内容の薄さは、まさに「永遠の0」レベルでした。

 

綿矢りさを凌駕するほどの筆力がない以上、あの独り語りは単調極まりないでしょう。

 

風刺について

カタログ小説かよ! 「なんとなく、クリスタル」かよ!
と突っ込まざるをえないほど現代の日本を憂いています。
そしてそんな憂いが、登場人物の言葉として語られますが、ここがもう腹話術丸出しなんです。
つまり、作者が思っていることがそのまま登場人物の考えとしてでてきているだけでは? と疑ってしまうほど体温が感じられない空虚な言葉が紡がれるのです。
それが一息で語られるからさらにげんなりします。ページ数が足りなかったのかよ、と思ってしまうほど延々と物語から浮いた話を押し付けられます。作者の「言いたい!」が先にきてしまっているように感じました。
もちろん登場人物の過去とも関係してはいるんですが、論点が完全にトラウマから離れた場所で展開されるところが僕を失望させました。

 

僕が興奮した場面について

こんなことばかり書いてるとまた怒られそうですね。
でももちろん僕が興奮した場面もあったんですよ。

 

それは教団Xの教祖である沢渡が神に触れるあの場面。
少女のか弱い命が自分の手に収まり、その自由を掌握した瞬間。まさに命で遊べる性的な快感です。

 

実際のところ、快感とは究極的には脳で感じるものです。
手触りとか柔らかさとか、そんな物理的な刺激には所詮限界があることを僕らは経験的に知っています。
粘膜の摩擦が、「気持ちいい」にそのまま直結するのなら、最後には擦り切れて終わりです。
物理的な空間では物理的な制約を受けることを僕らは知っています。

 

しかし、脳は違います。
電気信号で送られ続け、器を溢れさせ、垂れ流しとなる脳内物質は素粒子として宇宙を描きます。そこにユーフォリアがあるのです。トロけた脳は、必死に自身を変貌させ、「今」を理解しようとして、人は勃起するのです。

 

そんな興奮が、沢渡と少女の関係にありました。

 

そして、その興奮は僕にも伝わってきました。
ただし、変態さん向けです。

 

あんまり気乗りしなかったのでこの辺で。

 

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

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